Cryptorankが2025年8月5日に公表したデータによると、Web3分野は7月に132件、総額36億8,000万ドルの資金調達を記録した。【1】Cryptorankの集計手法の相違により、個別案件開示合計(約37.7億ドル)と若干の差異があるが、本レポートでは一貫性を重視しダッシュボード独自データを採用している。
2025年6月(119件・51億4,000万ドル)と比較すると、7月は案件数で10.92%増加した一方、調達総額は28.4%減少した。6月は特に規制金融や上場企業、伝統金融との統合案件で超大型ラウンドが相次いだことが要因。特にCircleの11億ドルIPOや4億ドル超ラウンド5件があったが、7月は4億ドル超ラウンドが2件のみで、最大は7月28日のMARAのPost-IPOファイナンス(9億ドル)となり、6月のピークを下回った。
2025年の年初は調達がやや低調で、1・2月はそれぞれ10億〜12億ドル台。3月に5億ドル突破、6月は直近2年で最高の51億7,000万ドルに達し、市場の成熟(資本集中・大型化・機関主導)を示した。
7月は調達総額がやや減少したものの、活動量は依然高水準を維持。高い案件数と資本投入は市場への強い信認を示し、Web3分野は資本配分の加速と構造変化が目立つ新フェーズに移行しつつある。
2025年7月のWeb3トップ10資金調達案件は、資本集中・機関化へのトレンドを強烈に示している。合計で27億5,000万ドルを調達し、ほとんどの案件が1億ドル超の大型ラウンドで市場全体に大きなインパクトを与えた。
最大はMARAがPost-IPO型転換社債で9億5,000万ドルを調達し、暗号資産マイニング企業の資本市場での調達力を見せた。次いでMill City Ventures IIIがPIPE型で4億5,000万ドルを確保し、Suiトレジャリー構築を目的とする。これによって、伝統金融のパブリック・ブロックチェーンへの関心と参入が引き続き高いことが示された。【2】
ラウンド種別では、Post-IPOとPIPE案件が主流となり、トップ案件の60%超を占め、とくにCeFiとブロックチェーンサービスに集中。このことは、上場・上場前企業が依然として資本流入の主要ターゲットであり、Web3と伝統金融の結びつきが強まりつつあることを示唆する。加えて、複数のプロジェクトが調達分の一部でBTC、ETH、SOLといった主要暗号資産をトレジャリー準備金として保有する方針を明言し、暗号資産の長期価値への信頼および企業財務戦略での重要性を高めている。
7月にはPolymarketによるQCEX買収の大型M&Aや、TWL Minerの9,500万ドル調達(シリーズB)もあり、市場に新たな成長ドライバーをもたらした。
総じて2025年7月のWeb3資金調達市場は、資本流入の力強さ、高度な集中、主要暗号資産への志向の高さが際立ち、産業の成熟局面への移行を明らかにしている。
Cryptorank Dashboardのデータから、7月の資金調達は「機関主導・規制対応・インフラ重視」が主要トレンドとなった。CeFiとブロックチェーンサービスの合計が月間調達総額の70%超を占め、伝統金融とクリプトを繋ぐプラットフォームへの関心の高まりや、規制対応・実用性重視の傾向が示されている。
CeFi分野はPIPE、Post-IPO、M&Aなどを中心に16億2,000万ドル調達し、機関主導・トップ層の存在感が際立つ。取引所やカストディアン、暗号資産運用プラットフォームなどが投資の中心で、Web2からWeb3へのユーザー・資本導線のゲートウェイと位置付けられている。
ブロックチェーンサービス分野はAPIプロバイダー、データ解析、ノード運用、セキュリティ監査等で約14億ドルを獲得。「Web3の武器商人」とも称されるこの領域は、インフラが高度化する中で開発効率・エンタープライズ対応サービスに資本が集まり、業界の成熟と普及推進の要と見なされている。
ブロックチェーンインフラ・チェーン分野は、調達額2億8,900万ドル・1億100万ドルと規模は小さいが、基盤技術(スケーラビリティ・セキュリティ・相互運用性)への投資と長期的な成長期待が根強い。
インフラ・中央集権型プラットフォームへの投資熱に対し、分散型アプリ(dApp)領域への投資は抑制され、分散傾向にある:
結果として、2025年7月の資金調達環境は「インフラ優先・サービス重視・アプリは選別投資」という明確な構図。資本はWeb2/3ブリッジ型の中央集権プラットフォームに集中、基盤インフラ案件も強い支持を維持している。
一方、C向け分散型アプリは潜在性を残しつつも投資熱は冷静さを増し、合理的な選別局面に移った。Web3は初期の実験段階から、より成熟し事業性が明確な発展サイクルへ進んでいる。
2025年7月に開示された103件のWeb3資金調達データによれば、投資家の動向は拡大・実用力を持つ成長中規模案件を中心にシフトしている。
最頻帯は300万〜1,000万ドル案件で全体の29%。主にシリーズAやBで、PMF(市場適合)の段階を越え、チーム・エコシステム拡大を目指すプロジェクトが多い。このレンジが投資家から最も注目されている。
300万~1,000万ドルと1,000万~2,000万ドルを合わせ全体の47.5%を占め、「成長投資中心」へと市場志向が明確化。初期トラクションやモデル実証済の案件に資本が流入し、市場リーダーに向けた競争力強化を後押ししている。
2,000万ドル超の大型案件も活動的で全体の22%超。主にCeFi、上場企業、M&A案件で、マーケットリーダーやWeb3-伝統金融連携への強い信頼が続く。
一方、100万ドル未満は15.5%、100万~300万ドルは13.6%で、アーリーステージ資金調達の難化と新規チーム・アイデアの継続登場が共存。エコシステムの活性化要素となっている。
総括すると7月のWeb3資金調達マーケットは「オリーブ型」構造――両端が少なく中央が厚い構成となっている。
投資家のロジックは「ストーリー」から「成長証明」へ移行。組織体制を整え、スケーラブルで持続可能なビジネスモデルを提示する案件を優先する傾向が強まっている。
2025年7月、ラウンド種別が開示された67件の資金調達データでは「成長ラウンド活発・シリーズAへの資本集中」が鮮明となった。
エンジェル・プレシードなど初期ラウンドは全体の16%近くを占めるが、資金比率は3%未満にとどまる。初期投資においては高頻度・少額投資へ方針転換し、選別の厳格化が顕著となった。
戦略ラウンドは案件数の割合こそ高いが、資本比率は9.7%と限定的。エコシステムやパートナー主導で、小口・戦略的な投資が中心であることを示す。
多くの案件でラウンド種別が定義されているものの、「非公開」種別も一定数存在。これにはPIPEやPost-IPOなど、伝統的資本市場型の資金調達が含まれ、Web3と従来型資金調達手法の融合が進む様子が見られる。
非公開ラウンドの一部は資金の使途をBTC、ETH、SOLなどの準備金確保と明示し、企業バランスシート上で主要暗号資産を資産戦略に組み込む傾向が高まっている。
総じて2025年7月のWeb3資金調達は、成長ラウンド主導・機関化深化へと移行した。
投資家はアーリー期ナラティブ追随から、市場検証・規制対応・持続可能なビジネスモデルを持つ中後期案件—シリーズA/B—への資本シフトを強めている。
また、PIPEやPost-IPOといった伝統金融手法のWeb3取り込みや、調達資金の主要暗号資産準備金化トレンドも加速し、プロジェクトの資本・財務戦略が多様かつ高度化している。
Cryptorankが2025年8月5日に発表したデータによると、Colosseumが9件の投資で7月最多となり、積極的な初期投資展開と幅広いカバレッジを示した。Coinbase Ventures(7件)、Animoca Brands(5件)も、インフラやコンテンツエコシステム拡大を中心とした戦略投資家として活躍。
リード投資家としてはAmber Group、SIG(Susquehanna International Group)、CoinFund、Factionなどが複数案件を主導。バリュエーションやエコシステム統合で影響力を発揮し、SIG・Amberは伝統金融系企業ながらWeb3分野で加速器的役割を強化している。
トップティア投資家が活発な一方、伝統・新興資本の融合も急速に進展。伝統金融機関とクリプトファンドが初期投資で交わることで、Web3エコシステムの資本運営が一層成熟・高度化している。
概要:Delabs Gamesは元Nexon役員James Joonmo Kwonが2021年に設立したWeb3ゲーム開発スタジオ。これまでRumble Racing Star、Space Frontier、Metaboltsなど複数のブロックチェーンゲームを手がけ、ゼロから創り上げる「遊べて楽しい」Web3ゲーム体験の実現を目指す。【3】
7月21日、Delabs GamesはHashed主導のシリーズA(520万ドル)を調達し、累計資金は1,720万ドルとなった。【4】
投資家/エンジェル:Hashed、TON Ventures、Kilo Fund、IVC、Taisu Ventures、Arche Fund(Coin98)、Yield Guild Games(YGG)、Everyrealm、Jets Capitalほか。
注目ポイント:
概要:Gaiaは、知能の構築・分散・所有を再定義する分散型AIネットワーク。ピアツーピア型インフラのもと、誰でもAIモデルやエージェントを独立ノードのグローバルネットワークで運用可能とし、透明性・プライバシー・レジリエンスを確立。Gaia Labsはその開発母体。【5】
7月23日、Gaia LabsはByteTrade、SIG Capital(Susquehanna)、Mirana、Mantle Eco Fund等の出資で、シード・シリーズA合計2,000万ドル調達を公表。【6】
投資家:ByteTrade、SIG Capital(Susquehanna)、Mirana、Mantle Eco Fund、EVM Capital、Taisu Ventures、NGC Ventures、Selini Capital、Presto、Stake Capital、FactBlock、G20、Amber、Cogitent Ventures、Paper Ventures、Republic Crypto、Outlier Ventures、MoonPay、BitGo、SpiderCrypto、Consensys Meshほか多数。
注目ポイント:
概要:Syntetikaはトークン化資産の発行・取引が可能な分散型プラットフォームで、イールド型クリプト商品や非上場企業株式、実世界資産(RWA)のトークン化等もカバーする。【7】
7月17日、Hilbert GroupがSyntetikaへのトークン化・分散型取引プラットフォームとして250万ドルのシードラウンドを発表。【8】
投資家:Russell Thompson(Hilbert Group CIO)、John Lilic(Hilbertアドバイザー、Nordark責任者)、Alex Berto(Aave/Allez Labs共同創業者)ほか。
注目ポイント:
概要:Blockskyeは、予約・経費・決済処理を効率化するブロックチェーン型法人向けトラベル&決済プラットフォーム。KAYAK for BusinessやPwCシステムと連携し、Blockskye Payでベンダー直決済を実現、仲介業者を排除する仕組み。【9】
7月17日、BlockskyeはBlockchange主導で1,580万ドルのシリーズC調達を発表。欧州・中南米・アジア進出とリアルタイム型ステーブルコイン決済商品の開発に充当予定。【10】
投資家/エンジェル:Blockchange、United Airlines Ventures、Lightspeed Faction、KSV Global、Lasagna、Litquidity Ventures、Longbrook Ventures、TFJ Capitalなど。
注目ポイント:
概要:Limitlessは現実世界イベントへの賭けができる分散型予測市場で、バイナリーオプションに近い仕組み。公開価格データから毎日新市場が生成され、0DTE(満期当日オプション)に似た高頻度・短期取引を実現する。【12】
7月1日、Limitlessは戦略ラウンドで400万ドルを調達、累計資金は700万ドルに。【12】
投資家:Coinbase Ventures、1confirmation、Maelstrom、Collider、Node Capital、Paper Ventures、Public Works、Punk DAO、WAGMI Venturesほか。
注目ポイント:
2025年7月、Web3業界は132件・36億8,000万ドルの資金調達を記録し、投資家熱意の継続が鮮明となった。今月は機関化・資本集中化が進み、Post-IPOやPIPE調達が主流となり、Web3と伝統資本市場の統合も加速。調達資金を主要暗号資産の準備金に組み込む動きも拡大した。
主な資金はCeFi(16.2億ドル)・ブロックチェーンサービス(14億ドル)領域に集中し、インフラ先行&サービス主導型の構造トレンドが明確。アプリ層案件への資金流入は控えめで、資本は中規模成長案件(300万〜2,000万ドル)やシリーズAラウンドに集中。物語型投資から成長実証型投資への移行と、戦略的な資本配分傾向が強まっている。
注目案件もWeb3市場の成熟・多様化路線を体現:
総じて、Web3資金調達市場は商業性の高いトップ主導型へ移り、成熟したチームと実証済モデル主導の新サイクルが始まっている。
参考:
Gate Researchは、ブロックチェーンと暗号資産に関する専門リサーチプラットフォームとして、技術分析、市場インサイト、業界動向、トレンド予測、マクロ経済政策分析など、プロフェッショナル向けに深度あるコンテンツを提供しています。
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